household
うちの居候達がくっついたらしい。 いや、それはいい。 ちょっと残念な気がするといやあ、そうだが、まあいい。 いーんだが・・・・。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 俺は頭を抱えてわめき出したくなるような気分を抱えたまま、コーヒーを飲んだ。 途端に口の中に広がる芳醇な香りは極上。 もちろん、こんなに美味いコーヒーに文句などあろうはずもない。 なのに、そのコーヒーを運ぶ口許は引きつってる。 そりゃあもう、痙攣かよ!と突っ込みたくなるほどに。 ・・・・原因は目の前に座ってメシを食ってる二人だ。 うちの居候のアリス=リデルと、ボリス=エレイ。 別に俺は二人が嫌いなわけじゃねえよ? 居候として俺の屋敷にいても全然気にならねえし、二人とも気の利いた会話も出来るし、ちょくちょく遊ぶには楽しい奴らだ。 だが・・・・だかしかし、だ。 「だから、照れてる場合じゃないだろ?」 「場合じゃないって・・・・場合でしょ、この場合。」 「場合だろ?アリスは利き手が開いてるから食べるのに支障ないけど、俺は利き手がふさがってる。俺の手を一緒に動かしても良いけど、それだとアリスの手首が傷つく。 だから、あ〜んv」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 ・・・・かなり、滅茶苦茶解説したくないが、してみると、だ。 この間からどういうわけか、ボリスと手錠で左手を繋がれているアリスがよせばいいのに、利き手を繋がれているボリスにうっかり『食べにくくない?』なんて聞いちまった。 で、それを聞いたボリスが例によって何か良いことでも思いついた顔をして、やったわけだ。 『じゃあアリス、食べさせてよ。』ってな! これがちょっと前のアリスだったら、何言ってるのでズバッと切って終わりだ。 それがこの間からどういうわけか、アリスは滅茶苦茶ボリスに甘い。 そのせいで、俺の目の前ではさっきからやたらと甘ったるい光景が繰り広げられてるってわけだ! 今も観念したように差し出したフォークから白身魚のソテーをボリスが口に入れたのを見てアリスが、ボソッと呟いた。 「・・・・そもそも、コレを外せばこんな羞恥プレイしなくてすむじゃない・・・・」 その通りだよ!俺もこんな空気に耐えなくてすむだろうが!、と俺も心の中で多いに同意したがボリスはにっこり笑った。 「ん?アリス、何か言った?」 ・・・・おめえ、聞こえてただろうがよ。 俺がこっそり突っ込んだ事はきっとアリスにもわかっていたんだろう。 もちろん、勘の良いアリスはそれの意味する所を感じ取ってため息を一つ。 「まだ、外す気にならないのね。」 「ん・・・・」 微かに返事をしたボリスの目が一瞬揺らいだ。 なんというか、最近ボリスはこういう顔をするようになった。 切なそうな目ってやつなんだろ、滅茶苦茶甘ったるい視線でアリスを見るくせにどっかに不安そうな色を残してる。 アリス限定でアリスのそばにいる時だけ。 そして甘い甘い声で囁く。 「もう少し。俺とくっついててよ。」 「・・・・しょうがないわね。」 諦めたように、アリスは言う。 けどな、アリス。 そう言ってる時のあんたが、どんな顔してるか見せてやりたいぜ。 すげえ可愛い顔してんだぜ? 困った顔を作りながら幸せそうな顔してる。 いつもの皮肉った冷めた顔も悪くねえけど、そんな風に笑ってるとすげえ綺麗だ。 まあ、俺としてはちょっと残念でもあるけどな。 そういう顔をあんたにさせてるのがボリスだってのがさ。 ほら、ボリスの奴、アリスのそういう顔を見た途端、ミルクもらった猫みてえに嬉しそうな顔しやがって。 「アリス」 あーあー、なんだよ、その甘えた声は。 んで、さらに耳元に口をよせんのかよ。 俺には聞こえないくらい小さな声で何か囁かれて、アリスの頬がぱっと赤くなった。 「・・・・っんとに」 「さ、食べちゃおうぜアリス。はい、あーん。」 赤い顔をしたアリスに、確信的微笑みを浮かべたボリスがまた口を開けて。 ―― ぶちっ 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜おまえらあ!!!!!」 俺は切れた。 「わーー!園長!落ち着いてください!!」 「そうですよ!園長、落ち着いて!!」 愛用の銃を取り出そうとする俺に従業員兼使用人達が慌てて止めに入ったが、そんなこたあ気にしてられねえ。 「ええい!これが落ち着いてられるか!ボリス!!てめえ、さっきから俺の存在、意図的に無視してやがんだろっ!!!」 「あ、バレた?」 「バレたじゃねえーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」 「園長、落ち着いてぇ!」 「離せ!!お前らだってこのピンク色の空気に耐えられねえって顔して目背けてただろうが!!」 「え、嘘・・・・」 アリスがちょっとショックを受けたような顔をしていたが、そこは事実だ、押さえておかねえと。 「え〜?だっておっさんが夕飯ぐらい顔だせって言ったから来たんだぜ?俺は別にアリスと一緒なら部屋でもどこでもよかったのにさあ。」 だよな?とか言いながらボリスの奴、アリスに音たててキスしやがった。 ぴきっ 「ボ〜リ〜ス〜・・・・・」 「おおっと、本気になっちゃった?」 「ちょっと、ボリス!」 「覚悟しろよ、てめえ・・・・」 「ふ〜ん、面白いじゃん。」 「はっ!?な、何言ってんのよ!ゴーランドも、やめて!」 「あーー、園長ぅ!これ以上、屋敷を壊さないでくださいぃ!片付けするの、私達なんですからぁ!」 ガチャッ 「悪い、お前達、それにアリス。恨むならそこの馬鹿猫を恨め。」 『えーーーーーーっっ!?』 「逃げるぜ、アリス!」 「えっ、ちょっと、まっ!!」 「待ちやがれーーーーー!!!!!」 ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!!! 愛用のマグナムをぶっ放して、今夜も俺は居候二人と追いかけっこを開始するのだった。 ―― まあ、こんなのも面白いとは思ってるんだけどな。 「ねえ、ボリス」 「ん?」 「あんた、ゴーランドをからかうために食堂に行ったでしょ?」 「さあね。」 「・・・・ゴーランド、からかうと面白いものね。」 「大丈夫、あんたを傷つけたりしないよ。ね?」 「・・・・・・・・・・・・・・・性悪猫」 〜 END 〜 |